へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「コッチにもいーるよ!…って、あらら?美味いのはどっちだ?」
すると、もう片側から同じように顔だけを覗かせたソイツも、尖った耳に大きな口と言った…見るからに、下級ヴァンパイアの容貌をしていた。
そうして、二匹で視線を見合わせ、少し困ったように会話をかわす。
「どっち?」
「どっち?」
…だが、仕舞いには互いにヨダレを垂らし、迷う事なく二匹同時にあたしに襲いかかってきた。
「オレ、おんNAAAA!!」
「オレもーッ!!」
ギャハギャハと、不気味な音にしか聞こえない笑い声をたてて、頭上から襲いかかってくるヴァンパイア達を、あたしはスライディングするように奴等の足元を通って避けた。
狭い個室の反対側の壁に着いた足を反動にして、そのまま振り向きざま体を起こす。
「オンナだ」
「そうだ、やっぱりオンナだ」
すると、あたしが先程いた場所の一点を見つめて、何かを確信したように頷き合うヴァンパイア達
そうして振り返った視線は、点々と続く赤い血の痕を辿り、そのままあたしの左腕の怪我に行きついた。