へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
ヴァンパイア達の灰色に濁った瞳が、あたしに定めされる
「残念だけど…これは、お前達に飲ませてやれる程、‘軽い血’じゃない」
武器を握った方の手を前に差し出し、血が滴る左腕はそっと背後に回した。
ポタッポタッ、と床に落ちる血痕は赤黒い染みを作って、狭い室内にあたしの血の匂いを充満させる。
「何だ…オマエ‥」
「オマエの匂い…嗅いだ事のある匂い…。ずっと、昔‥大好きだった香り…」
まるで夢見心地に、ぼんやりとした表情で語る奴等は、一種の恍惚感に浮かされているようだった。
「御見逸(おみそ)れしたな。お前の血は、アイツらに取っての一種のドラッグにも、似たものらしい」
静かに後退りあたしの横に肩を並べながら、ウェルシーは重苦しく口を開く。
「下品な言い方だな。媚薬とでも言って欲しいもんだわ」
それにあたしも軽口で答え、飛びかかってくるヴァンパイアを避ける為に、頭上の残骸部分に手をかけ体を持ち上げた。
肩透かしをくらい、少し前のめりに倒れ込むヴァンパイアの後頭部を狙って、折り畳んだ膝を伸ばし全身を振り子にしてブーツのカカトで蹴り飛ばす。