へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
キィ…と、少し体重移動をしただけで、大きく揺れる振り子状態のエレベーターに、あたし達は一瞬にして体を硬直させた。
「…い、今…どうなってるんだ…上…?」
キィキィ、と緩やかに左右に揺れる箱の上で、ウェルシーは上半身だけを何もない空間に投げ出しながら、うつ伏せの状態のまま掠れた声で問うてくる。
今、少しでも大きく体勢を変えようものなら…間違いなく、このエレベーターは真っ逆さまに落下するだろう
「…悪いが、とてもいい状態とは言えない」
あたし達の重みで、徐々に細く擦り切れていくロープを見つめながら、ガラにもなく冷や汗が背中を滴り落ちる。
まるで威嚇し合う時みたいに、ロープから目を離さずゆっくりと後ずさるって見ると、ブーツのカカトにぶつかった瓦礫の破片が、カランと暗闇の底へ落下したのが分かった。
…けれど、それ以上音は聞こえてこなかった
「…オイ」
「何」
「落ちた石っころの音が、しないぞ」
「分かってる」
「一番下まで、10階以上はあるぞ」
「分かってるって、言ってるだろう」