へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「分からん!!」
「はぁ!?」
プルプルと震えるウェルシーの腕を握り返し、あたしは叫ぶ
「この銃のさっきの破壊力なら、落下寸前に発射する事で…少しは衝撃を和らげられるかもしれない!」
いくらかの爆風の力を借りれば…或いは…ッ
しかし、この根拠のない賭けに、ウェルシーは少なからず不平を漏らす。
「非科学的だ!!」
「分かってる!だが、あたし達にはこの方法しか…っ…」
途切れた言葉は、わずかな希望の糸が潰えた事を表した。
──人生を終える瞬間は、まるで走馬灯のようだと人は言う
そして…それは確かに、その通りの光景だった。
無惨に千切れ落ちるロープ、急に身軽になった体と全身に感じる痛い程の風圧
そのどれもがスローモーションに進み、気付いた時には体感した事のないものスゴいスピードで、あたし達は落下に向かって速度を早めていた。
“撃て”と、叫ぶウェルシーの声が聞こえた気がしたが、耳元を掠める強い風圧でそれはかき消される
激しい突風で乾く目を必死に開け、ぶるぶると重力に左右される片腕に全身の力を込めながら、その銃のトリガーを思いっきり引いた。