へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「……っ!!」
見開いた瞳と唇は、激しい爆音と共に熱気と大量の煙を吸い込み、あたしの肺を咳き込ませる。
チリチリと顔にかかる火花が触れるだけで熱く、冷や汗だか何だか分からない汗が、全身をビッショリと濡らしていた。
「良かった、間一髪だったね」
上手く働かない頭でソロソロと首を動かすと、その“一瞬の悪夢”とは正反対に優しく微笑んでいる彼の姿
「…キ…キルバッシュ…‥」
ニコッと柔らかい眼差しで答えてくれる彼を前に、自分は命拾いをしたのだと悟る。
「ウェルシーは…平気?」
あたしとは反対の彼の腕に抱えられて、粉砕したエレベーターの残骸とまわる火の手を放心状態で見下ろすウェルシーに、視線を向けた。
…彼もまだ、助かった事が信じられないようだった
安否を問いかけるキルバッシュの問いには答えず、あたし達は静かに視線を合わす。
互いにゴクリと唾を飲み、またソッと炎燃え盛る下方の光景に目を釘付けにした。
キルバッシュが、こうして助けに入ってくれなければ……あたし達は今頃、確実にあの瓦礫の下でただの灰と化していただろう───…