へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「まるで、ヴァンパイアの爪みたいだ…それ」


「うん、そうだよ」

素直に口にした感想に、返ってきた思いも寄らぬ返答に、あたしは目を剥いて顔をあげる。


一方のウェルシーも、信じられないと言った感満載でキルバッシュの顔を見上げてきた。



「本物、じゃないとこんなに体重支えられないでしょ」

悪戯っ子みたいな瞳でそう首を傾げてくるキルバッシュに、あたしは返す言葉を失う。



『QUELL』お抱えの科学者、"D.C"…一体、奴はどこまで常識外れなんだ…。



「オ…オイ、キルバッシュ。早く下ろしてくれ…この体勢、頭に血が上る…‥」

すると、そんなあたしをずっと見つめていたキルバッシュが、情けない声を出して呻くウェルシーに気付き、やっと視線を逸らした。


強い瞳の戒めから解放されたあたしは、内心ホッと息を吐く



「ごめんね、じゃあ下りよう」

地面と平行に壁に立ち、両脇にあたし達を抱えたキルバッシュは、慣れない体重移動に細心の注意を払いながら、壁を滑り落ちる。


ガガガガッ、とコンクリートを削る鉤爪から火花が散った。



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