へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「……っ…たぁ‥」
流石に痛みに呻き声を漏らし、ゆっくり辺りを見回すと…無惨に散らばる瓦礫と、くすぶる火種で薄いモヤがかかっていた。
「大丈夫?」
怪我もなく無事に着地したらしいキルバッシュが、洋服の埃を振り払いながら手を差し伸べてくる。
「……平気」
その手を少しためらいがちに取り、視線を逸らしながら力を借りて立ち上がる。
「…う゛‥ぅ…」
その拍子に、実は下敷きにしていたらしいウェルシーが、苦しげに呻き声を漏らした。
そうして、そのまま気怠るそうに体を起こし、何とか無事なのを確認する。
すると、皮パンツのポケットの中をゴソゴソと漁り出し、クシャクシャになった煙草ケースを取り出して、そこにあった残り一本を無造作に口にくわえた。
「勝利の一服?」
「…まぁな」
キルバッシュの問いに手短に答えると、ジッポの代わりに辺りにくすぶる火を火種にし、ウェルシーは宙に向かって煙を吐き出す。
プカプカと形のないモヤみたいなそれは、あたしの中にさっきまで存在していた 遠い忌まわしい記憶までもを融解していく───…
そして…また、“忘れる”んだ。
*To be continued...?