へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
──そして、もちろん中には……
「姉さん!!」
「お前…!?」
頑丈な檻の鉄柵に手錠で両手を拘束され、情けない姿で佇む一人の男──…先刻、クイール中にあったあの謎の“へたれ男”だった。
「良かったあぁぁ~!姉さん、助けて下さいー!!」
あたしの顔を見た瞬間、心の底から安堵したように顔を歪ませ、泣きそうな声を出してくる男
一見、長身で好青年にさえ見える印象の割りには、そう言ってぐしゅぐしゅと情けない姿を見せる奴に、隣にいたウェルシーが少し驚きを見せた。
「あれが、お前が連れてきた男…」
まさか、と言った表情で軽く頭を抱える反応に、あたしは冷たい視線を送る。
「…何か、勘違いしてないか?」
「あんなのが、お前の好みだったとは…」
晴天の霹靂、とまではいかないまでも、あまりにもわざとらしく大袈裟に驚いて見せるウェルシーに、軽く蹴りを入れた。
「結果は?」
「正常値オールクリア、異常ありません。彼は、歴とした"人間"です」
そんなあたし達を気にすることなく、近くにいた男からカルテを受け取ると、キルバッシュはフム…と感慨深げに頷いた。