へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「そう…じゃあ、もう拘束する必要はないね」
やっと人心地が着いたように小さく息をもらすと、改めて男の姿をかえり見る。
「君の名前は?」
刺激しないようにソッと優しく笑いかけ、男の返答を待った。
「……」
しかし、人懐っこい彼にしては珍しくダンマリを決め込み、警戒するようにキルバッシュを見つめる。
…その様子に“ああ、コイツも一応"警戒心"と言うものは持ってるんだな”…と、妙な納得までしてしまった
「オイ、名前を言うんだ」
「メフィスト」
一向に何も答えようとしない男に業を煮やし、声を掛けたあたしにすんなりと返ってくる答え
そのあまりの素直さに、その場にいたほとんどが面食らい、キルバッシュは苦笑していた。
「私が尋問するより、君がやった方が早いようだね」
何がそんなに可笑しいのか、クスクスと笑い続け檻の前に立っていたそのスペースをあたしに譲る。
「……」
それに周囲からの不躾な視線を感じながらも…仕方無くそこに立って、檻の中の男・メフィストとか名乗る者と瞳を合わせた。