へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「…で、本当の所はどうなんだ。何故、一人であんな場所なんかにいた?」


「…だから…迷ってただけなんですってば…‥」

ふてくされたように、ボソボソと言葉を呟くメフィストに、あたしは溜め息を吐いた。



そして、静かにキルバッシュの方を振り向くと、仕方無いなと言った風に眉を下げている彼と目が合う。


その視線の意味を察し、もうここで尋問を終わらせようと、あたしが口を開きかけた時…

檻の中から差し出されて来た手に腕を掴まれ、驚きに目を見開く。



「…姉さん、怪我してる!!」

そうして…過剰な程の驚きっぷりでそう叫び、訴えてくるメフィストにその場にいた全員が驚愕した。



「お…おい‥」


「怪我?」

マズイ、と思ったあたしとは反対にその単語に逸早く反応したキルバッシュが、足早に近付いてくる。


…その様子に、あたしもウェルシーもギクリとした。



「フィア、怪我なんてしたの?」


「い…いや、これは…その、大した事なくて‥だな…」

シドロモドロになり咄嗟に肩口を隠した行動に、キルバッシュは容赦無く詰め寄ってくる。


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