へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「見せて」
「い、いや…こ、これは、本当に平…‥」
「見せて」
有無を言わせず、真剣な面持ちでそう言ってくるキルバッシュに、恐る恐る手のひらを外して咬まれた痕を見せる。
「……」
イヤな沈黙が辺りを制し、ウェルシーが誤魔化すように小さく咳払いをした。
「あーッ!!姉さん、咬まれた痕があるー!どうしよう!!ヴァンパイアになっちゃうの!?」
こんな時に限って、尚更空気の読めないメフィストがそう叫んで来て、あたしは"もう勘弁してくれ"と必死に心の中で祈る。
「これは、いつ?さっき咬まれたの?」
「あ、ああ…ええっ‥と…」
バツが悪くなり、逃げるように視線を背けると、焦った様子でコチラを見つめているウェルシーと目があった。
その視線を辿り、すぐにキルバッシュも彼に視線を向ける。
「…ウェルシー、フィアを守れなかったのかい?」
少し責めるような口調で言ってやれば、ウェルシーは面白いくらいにその顔をサッと青ざめさせ、口をパクパクさせた。