へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「そうなんだ…で、その理由を聞かせて貰ってもいいかな?」
騒然とする周囲とは反対に、その顔に微笑みさえ浮かべてキルバッシュは聞く
…メフィストは納得したように一度目蓋を伏せると、あの‘曖昧’な色の瞳を覗かせてハッキリと言った。
「美味そうだから」
「……」
「……」
「……は?」
その言葉に、唖然としなかった者などいるのだろうか。
「お、お前、何言って…」
あまりの突拍子もない台詞に、その場にいた全員が固まった。
なのに、メフィストは何の悪びれもなくその台詞を繰り返す。
「美味そうだから。だって、姉さんいい匂いがするんだもん」
「……」
ニコニコと嬉しそうにそう言ってくる彼に、あたしは返す言葉を失った。
「成程…それは、大した理由だね」
ゴホン、と軽く咳払いをし、その場の空気を一旦取り成したキルバッシュは、少し困惑げに眉根を寄せ何かを思案するように考え込み始める。
その姿に、あたしは尚更焦った。