へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「う~ん…」
…‥と、その怒りのエネルギーだけは通じたらしく、メフィストは困ったようにポリポリと頬をかくと、考え込む素振りを見せ始める。
その姿を至近距離から見つめながら…やはり、ハッキリした虹彩の見えない不思議な色の瞳に、魅入られた。
コイツ…やっぱり、何か他の奴と違う…‥
それは、予感だったのか直感だったのか。
───その時、"その事実"にあたしが気付いていれば、きっと…あんな出来事は、起こらずに済んだハズ
「フィア」
一瞬、思考がどこか遠いところをさ迷っていたあたしは、いつもより少しだけ堅いキルバッシュのそんな声に呼び戻された。
「戦い続きで疲れたでしょ…そろそろ、部屋に戻ろう」
「あ、ああ…」
然り気無く、メフィストの胸元からあたしの手を離し、労るようにソッと腰を抱き寄せる。
…その行為が、常よりも少しだけ強引なような気がして、ちょっとだけ戸惑いを覚えた
「姉さーん…もういっちゃうの?」
背後の堅牢な檻の中から、メフィストが寂しげに問いかけてくる。