☆三つ星☆
彼もどうやら気付いたらしく、軽く会釈をしてきた。こちらも会釈をする。

が、忘れてはならない。

彼は裏切り者なのだ。

私を夢の世界から何もない現実を見せつけた張本人だ。

プイッと背を背けて無視をしようと決め込んでいた。

「やっぱり、あのこと…その、怒ってるよね?」
彼がおずおずと、しかしながら優しい口調で聞いてくる。

言われてハッとする。

私は怒っているのだろうかと。

確かに、あのまま夢の世界に連れ去ってくれれば良かったのに、現実へ連れ戻したのはこいつだ。

でも、言いようがないほど、幸せで、嬉しかったのは事実なのだ。

口を聞いてやってもいいかな?と思った。
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