君が、大好きでした
もう伝わらない
ポタリポタリ涙が溢れて顎を伝い紙に滲んでく。ペンを持つ手はカタカタと震える。
紙に書かれた文字はただ一言。
好きです。
もう届くことのない言葉なんて百も承知。もう彼には可愛くて優しい彼女がいるのだから。ずっとずっと彼が片想いしていたあの子。堪え切れなくなって紙をグシャリと握ると自分の想いみたいでさらに虚しくなった。丸めてゴミ箱に捨てると新しい便箋に向き直す。
黄色い便箋に今度はスラスラと書き上げていった。“好きです”なんて私にいう資格はない。
ならば、これは…これなら私でも。
便箋を封筒にしまうと心を込めてシールを貼った。同時に私の心にもがっちりと一生開くことのない蓋を閉める。
あなたに、あなたの心に、この手紙は届くだろうか。
“大好きでした。
彼女と幸せになって下さい。”
END
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