+†ヴァンパイアと紅いアザ†+
幻想的な空間に包まれ、私は段々これは夢なのではないか、なんて思い始めた。
そうだ、私はお母さんに捨てられたのだから、こんな綺麗な家と人に囲まれている訳がないのだ。
ああ、なんて都合のいい夢。
心のなかで自嘲していると、静まり返っていた空間を切るように発声された銀髪の人の声。
「シャオラン」
「はい。」
ただ、銀髪の人はシャオランさんの名前を呼んだだけ。
ただそれだけなのに、シャオランさんは理解したかのように、
今度は私の方に歩いてきて、跪いた。
…………?
「シャオランと申します。」
そう自己紹介したシャオランさんは跪いたままこちらを見つめている。
「……水樹です。」
なんか、むず痒い。
なんで私は見知らぬ土地で自己紹介をしているんだろう。
あ、でもこれ夢か。
なら、まあ、いいか。
そもそも、何故彼は跪いているのだろうか?
私はベットから出て、床に立った。
「とりあえず、私なんかに跪くのやめましょう?」
懇願するように見つめると、シャオランさんは困惑したような表情を浮かべながらも、私の傍らに寄り添うように立ちあがった。
よよよ、よかったー!
美人さん(彼は男性だが)に跪かせるなんて、あんな恐れ多いこと……!
心のなかでホッとしながらも、目を覚ましたときから思っていた疑問を口に出した。
「あの……ここはどこなんでしょうか?」
私はドアの方に目を向ける。
つまり、先程からこちらを無言で見つめていた銀髪の人に質問をしたのだ。
なんでそんなこっち見てるのー!?
「シャオラン……呼んでおいてすまないが、ここからは席を外してくれ」
銀髪の人は私の質問を無視して、シャオランさんに命令した。
シャオランさんは静かにはい、と言った。