幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?
5分ほど遅れてきた耀太が出席をとる声を遠くで聞きながら、あたしはまた窓の外を見ていた。
中庭に青々と茂る草の間に、ぽつぽつと小さな黄色の花が咲いている。
おずおずといったその感じに、あたしはまるで心の中に咲きかけた“自分の夢”のようだと思った。
−−−−-……
昨日、耀太に夢は何か?と質問されて、あたしはほとほと困ってしまった。
夢なんて………ない。
でもそれを言うと、さらに耀太を呆れさせてしまう気がして。
なかなか言い出さないあたしを見て何か悟ったのか、耀太はこんな話をしてくれた。
「俺さ、昔から化学好きだっただろ?
いつかは化学者になりたいってずっと思ってて、当たり前のように大学も理工学部に入った。
毎日研究室にこもって実験に没頭して、そりゃ楽しかった。
でもさ、上に進むにつれて、そのまま親に負担を掛けながら自分の道を突き進むために院に進むか、多少妥協して就職を先を探すかって選択を迫られるようになって……
自分がやってた研究をそのまま活かせる仕事なんて、そうそうないんだよな。
ジレンマに陥ったよ。
最後には、なんでこんな研究してきたんだろって考えるまでなっちまって。
ある日、同じ悩みを抱えた奴らと研究室で通夜みたいな顔で飲んでたらさ、ゼミの教授に言われたんだ……」
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