幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?





どこか遠くを見つめて話す耀太。





あたしは相槌を打つのも忘れて、その横顔に魅入っていた。






――――――――『君達は化学が好きでここに居るんだろう?
もし君達から化学を取ったとしたら、どうだろう?


こんなにがむしゃらに頑張ってこれたと思うかい?
私が思うに、化学者という夢があったからこそ、君達はここまで頑張れた。違うかね?


夢を持つってことは、自分の未知なる部分を引き出す原動力になる、と私は思うんだ。


だから決して、“自分の追い掛けてきた夢”ってのを無駄だと思っちゃいけないよ』―――――






「………で、俺は結局その教授に奨められて教師になったわけだけど……


今じゃ教師になってよかったなって思ってる。
他人から見たら横道に逸れた形になるかもしんないけど、自分が培ってきた知識を他人に教えるってのはさ、思った以上に自分への刺激になるんだ。


おかげでまた研究魂ってやつに火が付いちゃって、今年は忙しくて無理だけど、いつか余裕ができたら、研究室にも足を運んで研究の続きをしながら教師できたらなって。


………って、何を言いたいのか自分でもわかんなくなってきちまったけど。
まあ、とにかくあれだ。
楓も夢を持て、夢を。
自分の未知なる部分、可能性ってやつを引き出すために」







最後に、俺熱く語り過ぎ?と照れ笑いを浮かべた耀太は、ごまかすようにコホンとひとつ咳ばらいをした。








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