幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?
「お前、えらく大荷物だな……?
それ、後ろに載せれば?」
しばらく車を走らせたあと、サングラスをかけた耀太が、バックミラー越しにあたしの膝にのった荷物を見て言った。
俗に言う“タクシー乗り”は、会話がしずらいのが弱点だよね。
あたしは信号待ちの間に、うんしょと荷物を抱えあげ、3列目のシートの上に放り投げる。
その際、ちょっと鈍い音がして、マズイ!とは思ったけど、そのままにしておいた。
「ずいぶん重そうな音がしたけど、何が入ってんだ?」
「着くまで秘密だよ〜ん♪」
「あっそ。いいもんねぇだ!
今からコンビニ寄るけど、楓にはなにも買ってこねぇし」
「いらないも〜ん」
君たち一体いくつ?ってツッコまれそうな会話をしつつ、車はコンビニの駐車場へと吸い込まれて行く。
一人で店へと入っていく耀太を見送りながら、あたしの顔に思わず笑みがこぼれた。
なんか、一気に昔に戻ったみたい………
これなら今日は、耀太が担任だってことも忘れられそうな気がするよ。
これも、カンタ効果……?
ゲージの中を覗くと、居眠り中のカンタが“そうだ”といわんばかりに、数秒だけ片目を開けてあたしを見つめた。
そして結局、なんだかんだいって優しい耀太は、あたし用にペットボトルの紅茶とお菓子を買ってきてくれた。
しかも、それが昔あたしが大好きだったお菓子だから、思わずまた顔が緩んでしまった。
こういうとこもツボだって、耀太は気づいてると思う?カンタ……
もう一度ゲージを覗きこむと、すでに夢の世界へ旅立ってしまったのか、カンタはピクリとも動かない。代わりといっちゃなんだけど、ヨダレがつつーっと口から零れていった。
ったく、アンタは相変わらず食いしん坊なんだね………
あたしがニヤニヤしている間に、車は穏やかな晴れ空のもとをまたゆっくりと動き始めた。
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