幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?




最後の方は、先生に、というより、自分に言い聞かせていた。




今だからわかる。
あたしは、笠井君、吾朗、2人を同じ理由で傷つけてきたんだって。
2人と付き合いながらも、心に耀太がいない日なんて、1日足りとてなかったのだから………






「そうね、自分も傷ついたわ。
でもそのおかげで、決心がついたのも事実なの」



「決心、ですか……?」



「そうよ。長年貯めていた自分の気持ちを、祥ちゃんにぶつける決心」



「それは……いつ…?結果は……?」





今現在2人は付き合ってるんだから、結果はわかってるのに、なぜかドキドキした。
多分、『幼馴染み』と聞いた時から、先生の話に感情移入してたんだと思う。





「うぅ〜ん、期待を裏切りそうで怖いけど、決心してから1年以上過ぎた高校の卒業式の日よ。
この想いから卒業するのに、ちょうどいいかなって。
……なんて、ホントはずっと勇気が出なかったからなんだけどね……」




ペロリと舌を出した先生は、恥ずかしそうにそう言って笑ったけど、あたしは笑えなかった。
というより、先生の言葉に衝撃を受けて、他に何も考えられなくなっていた。





“卒業式に、自分の想いからも卒業する”




そっか………、そういう考え方もできるよね。
無理矢理“想い”を消すのは難しいけど、“一度ぶつけた想い”なら、いつかは上手に昇華できるかもしれない。




「結果はね、実は祥ちゃんもおんなじ気持ちでいてくれたの。
彼女を作ったのも、似たような理由からだったって……」




それから先生は、散々ノロケ話を炸裂してたみたいだけど、ほとんどあたしの耳には届いていなかった。







やっとあたしが我に返ったのは、この高校に就職した話の時だった。




「石橋さんに気づいた時、驚いたわ。
同じ学部なのに、ちゃんと就職してるんだもの……」




そう、理由は簡単。
耀太の名前が出てきたから。
我ながら、重症だと思います、はい。





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