幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?
最初に飛び出した緑ハチマキに、コーナー辺りで他の色も追い付く。
そのまま最初に一団を抜けて直線に入ったのは、今や髪をなびかせてるイガグリ君だった。
“きゃ〜〜〜!楠先輩カッコいい〜〜〜!!”
そんな彼に対して、スタンドの下の方から上がった黄色い声援に、はたと気づいたことがある。
物好きなイガグリ君は“楠”という苗字で、下級生には人気らしいということを。
なんとういか、さらに惜しいことをしてしまったという気が増してしまったような……
いや、待て待て、楓。
アンタが好きなのは耀太でしょう?
その想いを貫くんでしょう?
うんうん、そうだ!
そうだった!
あたしが自分の中から不埒な気持ちを打ち消してる間に、バトンは2番走者へと渡っていた。
体操服の色からして、1年生のようだ。
まだあどけない感じが、なんか可愛い。
その子に声援でも送ろうかとした時、ちょっと慌てた様子の瑞穂があたしの肩をグイっと掴んできた。
「楓!アレ見てよ!赤の次の走者、“キモ ダサオ”じゃないの!?」
イガグリやらキモやら、通称ばかりで呼ぶ失礼極まりないあたし達だけど、その光景には度肝を抜かれた。
最後にバトンを手にした赤の2番走者、ダサい眼鏡がトレードマークの2年生 神木 怜二が、走り出した途端、疾風の如く目の前のトラックを駆け抜けていったのだから。
一同呆然。
隣の赤のスタンドのみが、
“イケイケ!神木!”
“さすがだね〜〜”
なんて、やんややんやの大盛り上がり。
一体全体、これはなんの冗談なわけ!?
パニクりつつも、なんとか視線だけは神木の姿を追うと、前の3人を見事にゴボウ抜きして、奴はそのまま1番で次の走者にバトンを渡した。
「キモ ダサオ……、恐るべし、だね……」
瑞穂の呟きに、誰もツッコむことなく、静かに頷いた。
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