幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?




乗ろうとしたあたしの視界に、シートに無造作に置かれたタオルがふと入ってきて、それを掴んでから改めて乗り込むと、途端にお尻に温かさを感じて、またまたびっくりした。




なんだ、このほっこりした温かさは………




まさか、今まで誰かがここに乗ってたとか………?




タオルを持ったまま、微動だにできない自分。
吹き出し口からゴォォと音を立ててる温風だけが、あたしの髪の毛を揺らしていた。




乗って早々後悔するなんて、ツイてない。
こんなことに気づくぐらいなら、後ろでタイヤに小突かれながら乗ってた方がまだましだったよ。



グラグラと気持ち揺れた車体に、後ろを振り返ってみれば、後方ドアをがっつり開けて、あたしの自転車を耀太が積み込んでるところで。



3列目シートを倒してある車内は、自転車なんて余裕で載る広さなんだから、耀太が言ったように、自転車のタイヤが後ろの席へと顔を出すなんてことはなさそうに見えた。




だからやっと運転席に戻ってきた耀太に、



「やっぱ、後ろでいいよ」



と言って、降りようとしたら、



「心配し過ぎ!
暗くて車内の顔なんて見えねぇよ。
前の方がシートヒーターが入るからここに大人しく座ってろ」



と、多少降りる理由を誤解されながらも、あたしの腕はがっしり掴まれてしまった。




「シートヒーター?」



「そ、だからあったかいだろ?ケツの下」




ニヤリと笑って、下を指さす耀太。




なるほど………
シートに電気カーペット機能がある車だったのか………




その温かさを人肌と誤解して嫉妬したなんて、とてもじゃないけどバレたくなくて。





仕方なくあたしはわざとマフラーを頭からかぶってムクれてみせた。




「こうしとくからいいもん」




もちろん、アホか!ってツッコまれてソッコーで取り上げられたけれど。




心もお尻もほっかほかのあたしは、始終ご機嫌で束の間のドライブを楽しんだ。







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