幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?
そんな、棚からぼた餅的なラッキードライブを楽しんだ翌日、今度はそのバチが当たったのか、あたしは寿命が縮まる程の思いをするハメになってしまった。
今日も瑞穂は風邪で休み。
しかも予備校はなし。
だけどすぐには家に帰りたくない理由がひとつ。
ああ見えてウチの母親、2週間に1回、自宅で料理教室なるものを開催してて。
それがまさしく、今日なんだよね。
前にも一度、鉢合わせしたことがあったんだけど、母親がペロリと『受験生』ってバラしちゃってさ。
やれどこの大学を狙ってるのかとか、やれウチの息子は大学行ってもニートになっただとか……
(前の母親のニート発言はここからきたらしい)
とにかくウザい!のひと言で。
できれば二度とあのババア達には会いたくない。
いつもなら、瑞穂の家に行くとこなんだけど、今回ばかりはそれも無理そうだし。
どうしよっかなぁ………
なんてフラフラ歩いてるうちに、向こうに図書館の窓が見えた。
そうだ!ここは受験生らしく、久しぶりに図書館でも利用するか。
避難場所が決まって、意気揚揚と歩くあたしの後ろから、大声で名前を呼ぶ声がして、はたと立ち止まって振り向いた。
「………ヒロキ、そんなに慌ててどうしたの?」
それは、走ってきたであろう長身のヒロキで。
「楓にちょっと聞きたいことがあってさ、探してたら背中が見えたから、ダッシュしてきた」
爽やかに髪をかき上げる仕種は、ヒロキファンの子ならキュン死するぐらいの威力があるように思えた。
あたしは俄然、隠れ耀太ファンだけどね。
「聞きたいこととは?」
「ここじゃなんだから、あっち行って話そう。
………そうだ、今日は予備校は?」
一度辺りを見回してから歩きだしたヒロキは、そう言ってまた立ち止まった。
なんていうか、お互い追試常連組だったというのに、今じゃそんな単語がポロリと口から出るんだから、ものすごい変化だと思う。
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