幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?





『クリスマスに本命のオーディションがあるからさ、それまでには身軽になってたいから、受験マジで頑張る』






文化祭の時、耀太に意気込みを聞かれ、瑞穂がそう答えていたのをふいに思い出してしまった。





もしそれを耀太が覚えていたとしたら……





あたしが嘘をついたことがバレてしまう。





思い出したのは耀太達が帰ってしまった後だったんだけれど、それでもなんだか後ろめたかった。






どうせなら、もっと上手い嘘をつけば良かったって。






そんなことを思えば思うほど、あたしの心はずんずん落ち込み、途中からヒロキの声なんて全く聞こえてない状態で。





「……か?……楓?楓!」



「えっ…あっ…なに?」



「だから、寒くないか?って」



「う、ううん。大丈夫だよ……」



「ったく…、なんかさっきからお前、上の空だよな……」



「ゴメン……
ちょっと寝不足で……」






こんな具合に、ヒロキを呆れさせてばかりいた。






「別にいいけどよ……
眠いなら寝てていいし。
膝かけ、ちゃんとかけとけよ」






あたしが反省する度、ヒロキが優しい言葉を掛けてくれるから、ますます居心地が悪くなって。






「じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっと寝るね……」



「おう、着いたら起こしてやるよ」



「ありがとう……」






目的地までの道中、あたしはひたすら寝たフリをさせてもらうことにした。






こんなどうしようもない女でゴメンね……






心の中でそうヒロキに謝りながら………







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