幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?




アシカショーを見終えた後、3時過ぎに、あたしとヒロキは再び車に乗り込んだ。




そして今や暑いくらいに暖房が効いた車内は、行きとは違って、一種の異様な雰囲気に包まれている。





どう異様かと言うと−−−





「水族館は、やっぱり夏に来るもんだな……
寒い思いさせてゴメンな」



「ううん。普段とは違う様子が見れて楽しかったし……」



「………そっか…」



「………」



「………」





はい、ここで2人はにかんで沈黙、みたいな。





これじゃあ、まさしく付き合いたてのカップルだよ……





内心焦りつつも、いつもの“淳弥バカ列伝”を切り出せる雰囲気でもなく、2人ともどんどん口数が減っていった。





なにか楽しいこと話さなきゃ、身が持たないかも……





そうだ!瑞穂にオーディションの結果を聞くフリして電話かけようかな。





思い立ったが吉日、いや吉時。





あたしがバッグをあさっていると、ふいにヒロキが口を開いた。






「弁当……」



「へっ??」



「マジで嬉しかった」



「あー-…、ありがとう。
あたしの取り柄ってこのぐらいしかないし。
即席みたいで申し訳ないんだけど……」






耀太達と出掛けた時は、全部手作りだったもんね……



それって、作る相手に対しての心意気の違いみたいだ。





わかりやすい自分の態度に苦笑していると、赤信号で止まると同時にヒロキが体ごと突然こっちを向いた。





「マジでこれからも、俺はお前を助手席に乗せたいし、たまにこうして遠出したい」





…………!?






普通にしなきゃと自分に言いきかせていたにも関わらず、突然の意味深発言に、ケータイを探すあたしの手がぴたりと止まってしまった。






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