幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?





「えぇっと……、色々考えてはいたんだけど、この場にくると上手く言えないと思ったので、俺なりにみんなへの手紙を書いてきたから、証書と一緒に受け取って下さい」




そう言うと、耀太はあたし達がさっき体育館で一旦返した卒業証書と、なにか白い束を掲げてみせた。




そうなんだよね、一度は校長直々に受け取ったんだけど、すぐに返したんだよね、あのただの紙。
(一応、卒業証書です……)




式の進行上の問題かららしいんだけど、担任から受け取るこっちの方が、あたしは正しいと思う。




だって一番お世話になった人だもん。





「安西 槙人!」




「はいっ!」





耀太に呼ばれて、今までで一番いい返事をしながら、証書を取りに行くクラスメート達。




二言三言会話を交わし、握手を求める人、冗談を言って耀太に小突かれている人、涙を浮かべて見つめ合う人など、それぞれだけれど、誰もが同じように白い封筒を受け取っている。





「藤村 楓!」




いよいよあたしの番になり、




「はいっ!」




体育館では何度も呼ばれてしまった名前も、ちゃんと一回で返事をし、自分は何としゃべろうか考えながら、ゆっくりと確実に、耀太の前へと歩み出る。





「卒業おめでとう。よく頑張ったな……」



「…あ、あり…が…とう…」




自分に向けられた優しく包み込むような笑顔に、あたしはしゃべるもなにも、勝手に涙が溢れてまともに返事すらできなくて。




そっと差し出された手を震えながら握ると、それに合わせて少し屈んだみせた耀太は−−−





「マジで色々ありがとな、楓……」




学校で、初めて下の名前で呼んでくれた。








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