幼馴染みが担任になったら…アナタならどうします?





いつもはもっと偉そうに喋るようちゃんが、その日に限って優しい目をして喋るから、あたしはただただその顔を見上げていた。







「おかんがお前の浴衣縫ってんのは知ってたけど……。うん、なかなかいいじゃん」






友達を待ってるとしか言えなかったあたし。
言ってもらいたかった言葉が嬉しくて、でも素直じゃないから聞こえないフリなんかして。





心の中では、ひたすら笠井君のトイレが長引くことを祈っていた。
このまま、ようちゃんと花火を見ていたいって。






ようちゃんがなんで1人でここに居るのかも疑問に思わなかった。






「なんだよ、今日は無口だな……?」






再び頭にようちゃんの手が伸びてきた時、コンビニの入り口の方から誰かが近づいてきた。






「お待たせ、耀太!あれ?知り合い?」






そう言って微笑む顔が、凄く綺麗で、あたしは瞬きさえ出来なかった。






「ん?長かったな?おっきい方だったのか?」






「何言ってんのよ!トイレ凄く混んでたの」






むくれてみせる顔も、その後の照れたような笑顔も、あたしには到底敵わない大人っぽさ。







「コイツ、隣の隣に住んでる楓」






ようちゃんに名前を言われて我に返った。






「はじめまして。藤村 楓です。ようちゃ…、耀太の隣の隣に住んでる者です」






この時初めて、あたしはようちゃんを『耀太』と呼んだ。







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