ひと夏の恋~満月の夜から始まった28日間の奇蹟~
彼女を見送ったあと、
俺はコーヒーを片手に
しばらくその場にぼんやりと立っていた。
その夜のことはどこか絵空事で、
俺は忘れられない人を心に浮かべていた。
そんな風に扱った彼女なのに、その彼女の
肌のぬくもりを思い出していると、
俺の中には
なんとも言えない感情が湧きあがっていた。
それはとてももどかしい想い。
自分ではまだ認めたくない想い。
だから
「人肌恋しい」と言った彼女を
抱いてやったんだと、
どこかでそう考えるようにしていた。
中途半端なのは俺自身だったこと、
そして俺の方が彼女に救われていることに
気づいていなかった。
『一度抱いた』=『自分のオンナ』
と、俺はどこかでそう意識し始めていた。