ひと夏の恋~満月の夜から始まった28日間の奇蹟~
ふと、東の方を見てそれまでの光景が一瞬にして霞んだ。
思わずクミちゃんの肩を叩いた。
「すごい・・・綺麗・・・。」
そんな言葉が彼女の口からこぼれる。
すこしだけ夜の闇が広がり始めたその淡い色の空の端っこに、夕日かと見紛うほどに真っ赤に燃える、月の姿。
とてもとても大きくて本当に真ん丸の満月だった。
その妖艶な様はオレ達が一日中激しく葛藤していた自分達の中の理性というものを焼き尽くすのには充分だったのかもしれない。
オレ達はその赤く赤い満月に魅了されて何かに獲り付かれたかのように一気に高まっていったんだ。