ひと夏の恋~満月の夜から始まった28日間の奇蹟~
クミちゃんは通勤は原チャリらしく、
いつも場内を自転車で移動しているんだ。
原チャリの通勤も大変だろうけれど、
場内の移動の自転車で
工場の規則で傘差し運転できないから
駐輪場までの道のりでびしょ濡れになる
ことに困っているようだった。
所長が
「山科くん。
トラックでクミちゃん送ってあげたら
いいやん?」
って言ったんで、
オレは思わず山科を見てしまった。
と、同時にクミちゃんも山科を見ていた。
山科は・・・
一瞬、ホンの一瞬だけど目を輝かせた後、
面倒くさそうに、立ち上がって、
それでも外の様子をみてから、
クミちゃんに声をかけた。
「送っていこか?」
クミちゃんは
「ホントですか?やったぁ~~」
って嬉しそうにいいながらも、
心底助かったぁ・・・ってカンジで
一瞬、オレの方を向いたあと、
帰宅の準備を始めた。
目があったオレは
なんだか無償にもどかしい思いがして
少しイライラしてしまっていた。