恋の相手は俺様王子!?

* ムカつくプリンス


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「――お前…」

「由梨です」

「……車の免許はまだか?」


マンションから出た場所で、私達はタクシーを待っている。


訳は彼が車では来ていないからで、私も免許なんてないから車なんてあるわけがない。


それを尋ねられている時、

「お前」

なんて連呼され続けていたことに今更気づいた私は、途端に腹が立って今に至るのだ。


「おい、免許ねぇのか?」

「ないです。 てか、"お前"とか"おい"ってしか人を呼べないんですか?」

「………」


どう見ても私より年上で成人して数年経っていそうな彼は、ちょっと礼儀知らずじゃないかと感じた。


「俺は……特別な奴しか呼ばねぇ主義だ」


威張って言うことか?


「私は特別じゃないんですか?
あれですよ、一応雇い主の娘ですよ」


さっきから雇い主と何度も言っていたじゃないか。

雇われているなら、ちゃんとしてほしい。


「んなの、俺には関係ねぇな。
俺には俺のやり方を主張出来る権利もある」


ムカッ!


「ああっ、そうですか!
じゃあ、私も適当に呼ぶけどいいんですよねっ?」

「好きにすれば?」

「好きにしますっ」


どうやら和解しようにも、根本的に私達は合わない人間らしい。

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