恋の相手は俺様王子!?

「お前は今学生だろ。 親御さん達は、お前を大学に通わせるため、不自由なく勉強に専念させてぇから面倒みてんだろぉが」

奴の言ってることが分からないわけじゃない。

学友の中には、バイトに追われて授業にも出られない子だっていた。

そんな友達を見てると、自分がどんなに楽な暮らしをしてるんだろうと情けなくなった。


「甘えられる内は甘えたっていい。 親だってな、いつまでもガキの面倒が見られるわけじゃねぇし」


あたしの気持ちを読み取ったかのように語る。


奴は、ベランダに目を向けて続けた。


「それに、自分のガキだからこそ甘えられるのは悪くねぇ。 いつかガキの方から離れて行くんだろうしな……」

「あんたは……」


なんでだろう。

奴の言葉には、一つ一つ説得力がある。

甘えられる時に甘えろ、か。


「俺が、なんだ?」

「ううん。 なんでもない…」


奴のことが分からなくなる。

一緒にいる時間は、誰よりも長いはずなのに、一緒にいても何一つ分からないまま。


はがゆい感覚に、胸を押さえた。

.
< 37 / 102 >

この作品をシェア

pagetop