恋の相手は俺様王子!?
「お前は今学生だろ。 親御さん達は、お前を大学に通わせるため、不自由なく勉強に専念させてぇから面倒みてんだろぉが」
奴の言ってることが分からないわけじゃない。
学友の中には、バイトに追われて授業にも出られない子だっていた。
そんな友達を見てると、自分がどんなに楽な暮らしをしてるんだろうと情けなくなった。
「甘えられる内は甘えたっていい。 親だってな、いつまでもガキの面倒が見られるわけじゃねぇし」
あたしの気持ちを読み取ったかのように語る。
奴は、ベランダに目を向けて続けた。
「それに、自分のガキだからこそ甘えられるのは悪くねぇ。 いつかガキの方から離れて行くんだろうしな……」
「あんたは……」
なんでだろう。
奴の言葉には、一つ一つ説得力がある。
甘えられる時に甘えろ、か。
「俺が、なんだ?」
「ううん。 なんでもない…」
奴のことが分からなくなる。
一緒にいる時間は、誰よりも長いはずなのに、一緒にいても何一つ分からないまま。
はがゆい感覚に、胸を押さえた。
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