恋の相手は俺様王子!?
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「やっぱり、不味いな」
「そうですね〜……」
翌日の日曜日、朝からバイトに行ってパンの作り方を教わったあたしは、帰って来て早々そのパンを奴に見せた。
形は悪く焦げていて、見るからに食べられる仕上がりじゃないのに、奴は一口分千切ると口に運んだ。
そして第一声が、上の言葉だ。
あたしは、ガクッと肩を落とす。
分かっていたさ。
不味いことくらい。
「…そう落ち込むな。 ンなもん、何だって慣れりゃできる」
「それ、10回目に作ったやつ。 作る度に、怪しい物体になるんだよね」
「………」
なんだ、その目。
お前は、本当に不器用だなって言われてるようだ。
多分思ってるな。
「まあ、パンは本職の奴に習え。 他は俺が教える」
「そうします……」
パン屋で働く限り、またいつでも教わることは出来るから、パンまで奴の世話にはなりたくない。
落ち込んでばかりもいられないからと、また課題に取り掛かろうとして気付く。
「ねぇ、何処か行くの?」
そういえば帰って来た時、カバンを担いでる奴と玄関でバッタリ鉢合わせしたんだった。
尋ねると、「ああ…」と言葉を濁す。
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