恋の相手は俺様王子!?

***

「やっぱり、不味いな」

「そうですね〜……」


翌日の日曜日、朝からバイトに行ってパンの作り方を教わったあたしは、帰って来て早々そのパンを奴に見せた。


形は悪く焦げていて、見るからに食べられる仕上がりじゃないのに、奴は一口分千切ると口に運んだ。


そして第一声が、上の言葉だ。

あたしは、ガクッと肩を落とす。

分かっていたさ。

不味いことくらい。


「…そう落ち込むな。 ンなもん、何だって慣れりゃできる」

「それ、10回目に作ったやつ。 作る度に、怪しい物体になるんだよね」

「………」


なんだ、その目。

お前は、本当に不器用だなって言われてるようだ。

多分思ってるな。


「まあ、パンは本職の奴に習え。 他は俺が教える」

「そうします……」


パン屋で働く限り、またいつでも教わることは出来るから、パンまで奴の世話にはなりたくない。


落ち込んでばかりもいられないからと、また課題に取り掛かろうとして気付く。


「ねぇ、何処か行くの?」


そういえば帰って来た時、カバンを担いでる奴と玄関でバッタリ鉢合わせしたんだった。


尋ねると、「ああ…」と言葉を濁す。


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