恋の相手は俺様王子!?

電話を切って深呼吸。


よし、大丈夫。


「あの、すみませんが……
この話はなかったことに……」


「お前が決める権利はねぇ」


問答無用で断られる。


だけど、私だって諦めるわけにもいかないんだ。


18歳にしてようやく手に入れた自由を、訳の分からない彼に邪魔されたくないじゃない!


もう一度と意気込んだとき。


「お前、料理できんのか?」


彼から初めての質問が返って来て、拍子抜け。


「えっと……」


「スーパーの出来合いもんを、あたかも自分が作りました的に皿に盛り付けすんのは料理じゃねぞ」

うっ……


「ついでに、インスタントも料理じゃねぇ。コンビニ弁当も言語道断」


ううっ……


「洗濯は? 掃除は? 部屋の隅々まで掃除して、フローリングにワックスして乾拭き出来るのか?
部屋の電気全部つけっぱなしにしてねぇか? 衣服は季節ごとにちゃんと収納出来てるか?
買い物する場所は把握してんのか?」


「……全部、無理……」


噛むことなく言い切った彼に対し、私は自分の情けなさを痛感していた。


料理なんて、そのうち覚えるだろうし。

洗濯なら近所のコインランドリーで、掃除も散らかって来たら適当になんて考えが、まるで見ているかのようにバレている。


なんで?


疑問符を頭に浮かべて彼を見上げると、彼は足下にあった大きなバックを担ぎ上げニヤリと微笑んだ。


「俺の雇い主は、お前のずぼらさを心配して完璧な家政婦を雇ったんだ。
俺を追い出してぇなら、まずは自分で何でも完璧に出来るようになってからにしな…お嬢ちゃん?」

「……っ……!?」


なんなのよっ!

今すっごく馬鹿にされた。

鼻にかけてフンって笑われた。


むーかーつーくーっ!!


私が1人悶々としてるなか、彼はまだ家具が何一つ入っていない部屋を覗き「ここ使うわ」と、勝手に自分の部屋まで決めてしまい。


私は開いた口が塞がらないという経験を、初めてしたのだった。

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