恋の相手は俺様王子!?

私は今、リビングからキッチンに立っている男の背中を見つめている。


勝手にやって来て、勝手に部屋を自分の物にした男は、これまた勝手にキッチンに立っている。


引っ越す前に買い揃えたキッチン道具や食器などをダンボールから一つずつ取り出し、無表情で一つずつ手に取っては、またダンボールに戻す。


いったい、何がしたいのかわからない。



「はぁ……まともなもんがねぇな」


その呟きは、サラリと風にかき消された。


「おい、お前家事する気全くねーだろ?」


「―――えっ? いや、はは……」


投げ掛けられた男の言葉にギクッと肩が揺れた。


機会じみた動きで、とっさに逸らした視線をまた男へと戻すと、男はたった今開けたダンボールをガムテープで閉めてしまった。


そして、何処からか取り出したマジックペンで何やら書いている。


「えっとぉ、何してるんでしょうか?」


気になって恐る恐る近づき背後から覗き込むと"いらないもの"と、ドデカく書かれている。


ポカーン。

まさにこの効果音が合う。


「どう見ても、リサイクルショップで買っただろ。
んな誰が使ったかわかんねーもんを、俺が使うわけにはいかねーから処分だ処分」


「―なっ!? なに勝手なことっ」


確かにリサイクルショップで買ったさ。

節約したかったしさ。


「節約? だだのケチじゃねーの? まだ百均の方が俺はマシだな」


ボソッと言った発言を聞かれ、嫌みを投げ掛けられる。

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