恋の相手は俺様王子!?
「俺ね、ひとつ嘘ついてた。 大学で知り合った言うたけど、ほんまは、相馬君の息子…陸君の幼稚園の先生と親として知り合ったんよ」
「そ、そうだったんですか…」
安藤さんの彼女が、此方に上京したのをきっかけに安藤さんも此方の幼稚園に勤めることにした。
そして、その幼稚園に陸君を通わせていて、同性ということもあり仲良くなったらしい。
「相馬君、あの頃は結構参っててな。 仕事掛け持ちしながら、陸君の世話に少し疲れてたんやろな。 やから、金が良いあの仕事を紹介したんや」
大学で出会ったと嘘をついたのは、あたしが陸君の存在を知らないかもと判断してだった。
全てを知っている上で、安藤さんは言う。
「君にとっては、これから沢山経験できる内のひとつの恋かもしれん。 やけど、陸君がおる相馬君からすれば、そうやない。
誰かと付き合うってのは、陸君には大きな変化になるやろう。楽しいだけの恋愛やない、辛いことも倍あるやろうから、それを分かってて、相馬君は君から離れたんやろな」
「簡単なことじゃないですよねぇ……」
「せやね。 どんな結果になっても、これだけは分かったってほしい。
相馬君が君から離れたんは、君を思ってのことやってこと」
彼があたしをどう思うかは関係なく、あたしが彼を引きづらなくてすむ内に、彼はあたしから離れた。
安藤さんは、それを彼なりの優しさだと言う。
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