恋の相手は俺様王子!?


「…俺には、陸がいる」


やっと、彼が仕事以外に触れた。

安藤さんが言った通り、やっぱり陸君のことだった。


彼は陸君を抱き上げると、小さな体を膝の上に乗せた。


「陸が一人前になるまで、女なんていらないんだよ」


分かっていても、痛い言葉に、あたしは俯いてしまった。


やっぱり、ふられるのかなって。


「そう思ってた。 実際、女がいなくても困ることはねぇし。 ただ、こいつに多少寂しい思いはさせると思ったくらいだ」


「うん……」


「でももし、陸が……俺が気になった女のことを、陸が気に入ってくれんなら、少しはその寂しさを解消させてやれんのか…」


「え……?」


顔を上げたら、陸君を抱きしめる彼がいた。

眉を寄せて、辛そうな笑顔の彼。


別れ際の時に見せた笑顔と同じだった。


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