オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
もう1人甲高い声の男があたしの前にゆっくりと近づきながら、ねっとりした声で言う。


それは皮膚じゅうをナメクジが這い回るような気色悪さと不快感をあたしに与える。


「青緑(せいりょく)高校の一年生……渚 杏子(なぎさきょうこ)ちゃん。
友達からはキャンって呼ばれてるんだよね?
カワイいね〜
やっぱり名前からかな?
血液型はO型……1月1日生まれ。
お正月に近いから、誕生日会とお年玉は一緒にされなかった?
そしたら可哀想だよ〜〜
だけど、これからは大丈夫だよ。ぼ、僕がぜんぶお祝いしてあげるから、ね?
ケーキはどんなのが好き?や、やっぱり女の子はイチゴだよね」


1人で勝手に喋りながら近づいてきた男に、寒気も恐怖もあたしは抱いていた。


こいつ、あたしのこと調べてる!!


でもそれ以上に記憶の底から引きずり出されたものにより、あたしの心はある感情が大きく滲みだしてきた。


それは――




『怒り』




感情の中でも原始的な部類に入るそれを、あたしはふつふつとたぎらせてた。
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