オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
――ドクン――



一瞬――


中心から全細胞を揺るがすように、あたしの躰は大きく脈動した。


それと同時に、目が。


目の奥が熱を帯び、まるで燃えるように灼ける。


だけど、あたしは痛くも痒くもない。


むしろ


“心地よかった”。


ゆらりと揺れる、陰を見据えながら、あたしはあたしでない声音で言う。


『そうだ……近づくがよい、穢れしものよ』






ハッ、とあたしが我に返ったときはまるで白昼夢でも見たような、不確かな感覚の残骸が残るだけで、掴もうとしても掬いとれないもどかしさがあった。


ベラベラと喋る男は、不思議と怖くなくなった。

もう1人いる、多少屈強そうな男も。


それより今のあたしには、この目にしっかりと映っているモノの方がよほど大問題だった。


正方形の形の事務所は常夜灯と窓の外からの明かりしかないため、ものの形がぼんやりと判別出来る程度。


あたしから見て正面の入り口から左手にスチール製の棚が2つ並び、机は反対側にひとつ。
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