短編集
合言葉
小さい頃によく友達と合言葉を作った。小さな子供が考える合言葉なんて、今になって思えばひどく陳腐でひねりのないものだったけど、それでも当時はとても大切なものだと思っていた。思って、いた、のに…
「合言葉?んなの覚えてねえよ」
「え?で、でも、」
「つーか今更なに?より戻したいとかやめてくれよな。もう終わったことなんだし」
「ちがっ…!」
時は確実に流れている。逆らうことができるわけもなく、あたしもゆっくりと、でも確実に流されていく。小さい頃の合言葉なんて覚えているほうが不思議なんだ。
彼は正しいことを言っている、だからこそ伝えたくなってしまう……あたしのエゴだ。
「『好きになってもいいですか』!」
「……は、あ?」
「…『好きになってもいいですか』っ!」
君が好きです。小さい頃から一緒にいてくれて、いじめっ子からも助けてくれて、男の子は苦手だけど君だけは苦手にならなかった、君のことだけは大好きだった。
――『好きになってもいいですか』
いつもは君が言ってくれていたから、今度はあたしが君に聞く番。どうかお願い、忘れないでいてください。あたしとの思い出を消そうとしないでください。
想いはいつも1つだった。
「…『1、2、3で目を閉じて』」
「……っ!」
「…お前は『1、2、3で目を閉じて』りゃいいんだよ。早くしろ、のろま」
「っは、はい…っ!」
「合言葉?んなの覚えてねえよ」
「え?で、でも、」
「つーか今更なに?より戻したいとかやめてくれよな。もう終わったことなんだし」
「ちがっ…!」
時は確実に流れている。逆らうことができるわけもなく、あたしもゆっくりと、でも確実に流されていく。小さい頃の合言葉なんて覚えているほうが不思議なんだ。
彼は正しいことを言っている、だからこそ伝えたくなってしまう……あたしのエゴだ。
「『好きになってもいいですか』!」
「……は、あ?」
「…『好きになってもいいですか』っ!」
君が好きです。小さい頃から一緒にいてくれて、いじめっ子からも助けてくれて、男の子は苦手だけど君だけは苦手にならなかった、君のことだけは大好きだった。
――『好きになってもいいですか』
いつもは君が言ってくれていたから、今度はあたしが君に聞く番。どうかお願い、忘れないでいてください。あたしとの思い出を消そうとしないでください。
想いはいつも1つだった。
「…『1、2、3で目を閉じて』」
「……っ!」
「…お前は『1、2、3で目を閉じて』りゃいいんだよ。早くしろ、のろま」
「っは、はい…っ!」