短編集

さよなら

君にもらった手紙にはたった一文。

『金曜の放課後
校門で、待ってる』

そう、書かれていた。

ずっと好きな人だったから、すぐにでも会って話をしたいくらいで。

だけど待つことにした。

毎週やってくる憂鬱な金曜日が、素敵な日になると信じて疑わなかった。


火曜日、君は学校に来ない。

大会があることは前から知っていたけど、やっぱりいないと寂しい。

明日になれば会えるよ、と励ましてくれる友達の声には、曖昧に頷いておいた。


水曜日、君は笑ってやって来た。

おはよう、と朝一番に言ってくれて、寂しいと思ったのが嘘のように嬉しかった。

大会のことを聞くと、いたずらな笑みを浮かべて勝ったに決まってんじゃん、と言う。

胸が苦しいくらいドキドキした。


木曜は雨が降っていた。

私は待っていられなくて、君に今日じゃだめなの、と訊いてしまった。

君は笑って全然いいよ、と言う。

君には病院に行く予定があったし、私にも先生と話さなければいけないことがあった。

だから君が、すぐ病院から戻ってくるから待ってて、という言葉に頷いたの。

それが間違いだった。


君は病院から戻ってくるとき、左折したトラックに巻き込まれて死んでしまった。

早く君から話を聞きたくて焦ったから。

私が木曜にしようと言ったから。


「……ごめ、ん、なさい…」

君はいない。

あの笑顔は見れない。

「……ずっと、好きだった、よ」

想いは伝わらない。

「──…会いっ…たい…っ…」


会いたいよ、君に、会いたい。

もしこの想いに終わりがくるとしたら、それは私が君のところに行くとき。

君以外に想える人なんていない。


だから、また逢える日まで


ほんの少しだけの


「──……さよなら…」




★君にさよならと告げる
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