短編集
「お前は?」

「私?」

「オレのどこが好きなの?」

嫌いではない、けれど好きなわけでもない。好きなところなんてわからない。それでも「どこが好きか」と問われると思い浮かぶ。

「子供っぽいとこ」

「はぁ!?」

「くせっ毛で、すぐ抱きついてきて、意地悪のくせに優しくて……全部好きかも」

「"かも"かよ…」

「だってよくわからないんだもん」

好きという感情がどこからくるのか。好きとはなんなのか。きっとずっと求めていた。好きになれる人を、私はずっと求めていた。

「まぁ、いいけど」

「照れてる」

「……照れてねぇ」

彼を好きになれたのはどうしてだろう。ずっとずっと好きだと認めたくなかったのに、今になって認めたのはどうしてだろう。まるで嘘をつきたがる子供のように、いたずらがバレないよう嘘に嘘を重ねる子供のように。

――私は嘘をつきたかった。
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