短編集
夏祭り
最近「あの子」はおかしい。
「あの子」のおばさんがいなくなってから、一緒に遊んでくれなくなったし、学校が終わったらすぐに帰ってしまうようになった。

理由を聞いても「あぶらあげにあぶらあげをお供えしているのよ」とふざけて、本当の理由を教えてくれることはない。

別に寂しいわけじゃない。

ただ「あの子」が私のことを嫌いになってしまったんだと考えてしまって、胸がズキズキと痛む。嘘をつくくらいなら正直に言ってくれたほうがいい、そのほうが私も「あの子」から離れる決心ができるから。

でも「あの子」は私を嫌いになったとは思えないくらい笑顔で、それでもやっぱり前よりも「あの子」と私の時間は短くなった。

6年生にもなれば塾にも行かなきゃいけないし、小さい頃からずっと続けている習い事にも行かなきゃいけない。

「あの子」との時間はどんどん減っていくのに、「あの子」のことが大好きっていう気持ちに変わりはない。

だから、本当の理由が知りたくて、でもきっと知らないほうがよくて。

――そして今、私は「あの子」を追いかけている。

鬼ごっこのように追いかけているのではなくて、探偵が犯人を追うようにこっそりと。はっきり言ってしまえば、尾行をしている、ということになるだろう。

こうでもしないと「あの子」が私と遊んでくれなくなった理由がわからないもの。決して正しいことではないけど、でも、知りたい。
< 3 / 17 >

この作品をシェア

pagetop