短編集
「誰かを守るためについた嘘が、誰かを傷つけたとき、お前ならどうする?」

彼は突然そう聞いてきた。

誰かを守るためについた嘘が、誰かを傷つけたなんて、考えたこともない。

自分だけがよければいいんでしょ?
だから嘘をつくんでしょ?

嘘をつくくせに人の痛みを考えるのは、ただの偽善でしかないと思う。

「いきなりどうしたの…」

「いいから」

「…仕方ないんじゃない?全ての人に幸せを与えるなんて、スーパーマンでも無理よ」

そう答えると、彼はこちらをちらっと見て、手に持っていたシャーペンを置いた。
そして疑問を投げかける。

「もし俺がお前に嘘をついていても、仕方ないって言えるか?」

俯きながら、淡々と。

それにどんな意図があるのか。
なんて、そんなことはわからないけれど、気に障ることを言ってしまったのかもしれない。

だからと言って撤回するつもりはないし、別に必要性も感じない。

「…気にするだろうけど、それがあんたの意志なら仕方ないじゃない」


所詮、人は誰もが嘘つきなのだ。



★嘘
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