アライブ


『そんなの簡単な理由さ…ただ俺が家族を幸せにできなかっただけさ…』


無精髭を生やした男は傷口に手をやりながら、残念そうに告げた。


『幸せに出来なかったか…』


修二は無精髭を生やした男の言葉を繰り返した。


『ギャンブルにのめり込んで多額な借金を抱え、毎晩酒に呑まれてまともに家になんて帰らなかった。そんな男に妻は愛想をつかし、息子を連れて家を出て行った…当然のことだよな…はぁ、はぁ』


無精髭を生やした男は息を切らしながら静かに話しはじめた。


『けど…失って初めて気づいた。妻と息子がいなくなって、自分の心の中にポッカリと穴が空いたみたいで…。今まで居て当たり前だった存在だったから…』


無精髭を生やした男は悔しそうに唇を噛んだ。



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