執事_HOLIC!
麗の姿に、それまであたしの傍に居たステラは、一目散に住処にしているダンボールへと帰って行った。
麗はその姿を目で追い、何もなかったかのように尻餅をついているあたしに手を差し出す。
「お部屋にお戻りください。そろそろ午後の家庭教師が参ります」
「あ…うん」
麗の手を取り、立ち上がると「さぁ…」と部屋へと促された。
ステラの事、何も言わないのかな…
「あのっ、猫のことはお父様には…」
「ユウお嬢様が大切にしていらっしゃるなら、見つからないようにしなければなりませんね」
柔らかい微笑を浮かべ、「行きましょうか」と麗はあたしを覗き込む。
麗はあたしのために見なかったふりをしてくれてるんだと気付いて、その小さな優しさがとても嬉しく感じた。