幼なじみ
そんなことがあってから、しばらくしてのことだった。

あれは確か、小五の始業式が終わった頃だったと思う。
ハヤトのお母さんが、劇団の関係者のひとりと駆け落ちをしたのだ。

『ごめんなさい。探さないでください。』

たったこれだけの。
一枚の紙切れを残して。

ハヤトのお父さんも。
ハヤトも。
思いつくところを片っ端から必死になって、探し回ったらしいけれど。
ハヤトのお母さんの行方は今になっても、分かっていない。

そのうち、なにもなかったかのように、春がやって来て。
あたし達は当然のように、小五から小六になって。
当たり前といえば当たり前かもしれないけれど。
ハヤトはいつのまにか、劇団をやめていた。
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