幼なじみ
「どうして、ハヤトは出さずに?」
自然とそう、あたしは呟いていた。

「さぁ、ね。男ってバカだから、なかなか弱みを見せられない生き物なんだよ。本当はとても、助けて欲しくてもね。」
店長さんは一息つくと。
「あいつは、君になにを見ていたんだろうね?恋?愛?家族?友情?」

「全部だと思います。」
口が勝手に、そう応えていた。

どれかひとつじゃなくて。
少しずつ。
きっと全部。
あたしがそうだったように。
ハヤトもそうだったと思いたい。

「だからかな?最後に、君に写メを送ろうって言いだしたのは。君に届けたかったのかもしれないね。なんとなく自分の最期を感じていて。」
そう言って、寂しそうに微笑んだ店長さんの顔を。
あたしは一生、忘れないと思う。

「ありがとうございました。さようなら。」
小さく会釈をして、あたしは扉を開き表に出た。
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