王子に姫の恋情を…
「ごめん、言った記憶がない…」
『無意識か…』
彼方は左手で前髪をクシャっと握った
俯いたのに隠しきれていない赤い顔が見えて
私の顔までつられて赤くなる
「…あのね、西田君にはね」
私はそこから話を切り出した
彼方はぱっと顔を上げた
『嫌なら言うな、強要している訳じゃねぇ』
その言葉に
私は首を横に振った
違う
私が彼方に言いたいだけなの
さっき分かっちゃったんだ
私が言いたくなかったのはただ自分が可愛いだけなんだって
結構長い間一緒にいるような気がしていたけど
全然そういう話をしてないなって気付いた
彼方の事なんて何も分かっていなかったんだなって
だから、言いたい
「…昔から男の子には何故か嫌われていたみたいで
いっつも虐められていたんだ
だから男の子は苦手で、虐められることがなくなった中学生ぐらいになってもなるべくかかわらないように距離をとってたの」
西田君の話に入る前置きはこんな感じ
今でも理由がわかんない
そこまで話すとふぅっと一息ついて彼方を見た
彼方は私が思っていたよりも真剣に話を聞いてくれている
「それで、中学生のときに
西田君に告白されたの」
とたんに
彼方の目元が険しくなった