王子に姫の恋情を…


だけど、何も言う様子がないから
私は話を続けた



「勿論断ったの
それなのに、西田君は納得しなかったみたいで私を押し倒してきて…
それで…」


グィッ



私が言うのをためらっていると
前の彼方の方へと引き寄せられた



ギュッ


…腕の中はあったかい

いつもよりか抱きしめる力が強いように感じた


まあ、抱きしめてもらったことって数えるぐらいしかないけどね



「…彼方?」

突然どうしたの?


そう言いたかったけど
更に抱きしめる力が強くなったから言わなかった



『それ以上言うな』


頭上から聞こえてきた彼方の声は
どこか苦しそうだった


なんで

何で彼方が苦しむの…?



私は何も言えなかった

彼方も何も言わなかったから、無音の時間が過ぎていった




『…どこまでされた』


ポツリと呟くような声で問いかけてきた


ドキン


こ、ここまで来たら言うしかないよね

私は生唾を飲み込んだ



「き、キスまで…」


ものすごく小さな声で
それこそ、聞こえるか聞こえないかぐらいの



だって絶対これを言ったら…



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